ぬか床の年齢って、知ってますか?

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ぬか床の年齢って、知ってますか? | MEGURU 発酵だより
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ぬか床の年齢って、
知ってますか?

こんにちは、MEGURUの発酵だよりです🌿
突然ですが、ぬか床には「年齢」があることを、ご存知でしたか?

「毎日混ぜているけど、うまく漬かっているのかな?」
「続けていれば、ちゃんと育っていくの?」

そんな疑問を持ちながらぬか床と向き合っている方に、少し心強いお話をお届けしたいと思います。

九州大学が解き明かした、ぬか床の「菌の世界」

2011年、九州大学大学院農学研究院の阪本直茂・中山二郎らの研究チームが、 ある興味深い研究結果を発表しました。

北部九州地区のぬか床店や家庭から集めた16種類の熟成ぬか床を、 次世代型DNAシーケンサーという最先端の分析技術で解析。 その結果、ぬか床の中に生きている菌たちの姿が、科学的に明らかになったのです。

「100年以上の長期間、発酵と熟成を繰り返すという操作の結果生まれてきたフローラは、意外とシンプルであるが堅牢であることが分かった。」

── 阪本直茂・中山二郎,「糠床のミクロフローラと乳酸菌の共生」,生物工学,第89巻 第8号(2011)

「シンプル、だが堅牢」という言葉が、とても印象的です。 続けることで、ぬか床はどんどん洗練されていく。

ぬか床の「年齢」によって、菌叢はこう変わる

研究では、熟成年数の異なるぬか床を比較することで、 年月とともに菌のコミュニティがどのように変わるかが明らかになりました。

菌叢の変化タイムライン
〜1年
スタート期
多様な菌が入り混じり、まだにぎやかで落ち着かない状態。乳酸球菌(Leuconostoc・Pediococcus)なども混在している。
数年〜40年
成熟期
雑多な菌が少しずつ整理され、乳酸桿菌(ラクトバチルス属)が主役へ。個性が出てくる段階。
40〜100年超
完成期
菌叢がシンプルに収束し、腐敗を自力で防ぐ力が最大化される。究極の堅牢性。

まるで人間の成長のようですね。 生まれたばかりのころは色々な個性がぶつかり合い、時間を重ねるにつれ、 本当に大切なものだけが残っていく。

主役を担う2種類の乳酸菌

特に重要な役割を果たしているのが、この2種類の乳酸桿菌です。

Lb. namurensis
発酵初期に素早く増殖し、乳酸を生産する「先行走者」。乳酸濃度を一気に上げる役割。
Lb. acetotolerans
ゆっくりと、しかし確実に増殖し続ける「長距離走者」。最終的に最優占種となり、pHを下げて腐敗を防ぐ。

面白いのは、この2種類が互いに役割を補い合っていること。 まず素早い菌が発酵の火を付け、次に粘り強い菌が安定した環境を守る。

RESEARCH NOTE

季節が変わっても、パターンは変わらなかった

研究では、春・夏・秋・冬の異なる季節にサンプリングした糠床でも、「Lb. namurensisが先に増殖し、Lb. acetotoleransが後から最優占種になる」という変遷パターンが常に再現されることが確認されました。季節の気候変動に左右されない、驚くべき安定性です。

「足しぬか」には、科学的な理由があった

さらに興味深い発見があります。 私たちが数週間〜1ヶ月に1回行う「足しぬか」の周期が、 この2種類の乳酸菌の増殖周期と、ぴったり一致していたのです。

「先人達が自然と行ってきた作業であるが、それを繰り返すうちにその環境に最も適したものが自然と集積されてきた。」

── 阪本直茂・中山二郎,同論文より

数百年にわたってぬか床文化を受け継いできた人たちは、 科学的な知識がなくても、体験と勘で最適な管理法を編み出していた。 なんだか、少し感動しませんか?

ぬか床は、続けるほど
科学的に強くなる。

毎日のお手入れが、未来の「強いぬか床」をつくっています。

「白い膜」が出たとき、慌てないでください

糠床を育てていると、表面に白い膜が張ることがあります。 「カビ?」と驚いてしまう方も多いのですが、これは「産膜酵母」といって、 乳酸菌と共生関係にある菌なのです。

研究によれば、産膜酵母はぬか床の独特な風味成分を生み出すのに一役買っています。 過剰に繁殖してしまうと臭いの原因になることもありますが、 少量であれば「糠床が活発に生きている証拠」。 混ぜ込んでしまえば大丈夫です。

糠床は、菌たちが支え合いながら生きている、小さな生態系。 あなたが毎日手をかけることで、その生態系はじっくりと育まれています。

1年目のぬか床も、100年のぬか床も、
最初は今日と同じ一日から始まっています。

焦らなくていい。続けることが、すべてです。
今日も、一緒に育てましょう。

─ MEGURU 発酵だより

参考文献
阪本直茂・中山二郎「糠床のミクロフローラと乳酸菌の共生」
生物工学,第89巻 第8号,pp.482–485(2011)
Sakamoto, N. et al.: Int. J. Food Microbiol., 144, 352 (2011).
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